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インドラ (ウパニシャッド) [神話]


あるとき恐ろしい怪物が地上の水を全部封じ込めてしまい日照り続きになりました。ひどい干ばつで世界中がとても苦しんだんです。
そのときインドラは自分が稲妻の箱を持っていたことを思いだしその稲妻を投げつけて怪物を退治する事ができました。すると水がどんどん流れ出し世界は救われました。インドラは思いました。「私はなんて偉大なんだ!」





そこでインドラは世界の中心にある山に登ってそこに新しい都市を築くことにしました。
偉大な自分にふさわしい宮殿を建てようと決めたんです。
インドラは神々のために働いていた大工の棟梁を呼んで宮殿造りを命じました。







棟梁は忽ちすばらしい宮殿を造り上げました。でもインドラは見に来るたびに「もっと大きくしろ!もっと豪華にしろ!」と要求します。









そこで棟梁は言いました。
「あなた様も私も不老不死ですしあなた様の願望には限がありません。これでは私は永遠に囚われの身です」









棟梁は創造主である神ブラフマンのもとに行き苦情を申し立てることにします。
ブラフマンは聖なる力と聖なる恩寵のシンボルである蓮の花に座っていました。








その蓮はヴィシュヌの臍から生えています。ヴィシュヌは眠れる神で彼の夢が宇宙なんです。
棟梁はブラフマンのもとにやって来るとことの一部始終を訴えました。
するとブラフマンは言いました。
「私が何とかしよう」






次の朝まだ完成していないインドラの宮殿の前に青黒い肌の美しい若者が現れました。その周りを沢山の子供が取り囲んで彼の美しさを称えていました。









その若者がインドラの玉座の前にやって来ると王であり神であるインドラはこう言いました。
「よく来た!だが何のためにこの宮殿を訪ねたのかね」
すると若者は地に轟く雷のような声で答えました。
「あなたがこれまでのどのインドラよりも立派な宮殿を建てていると聞いたものですから。ぐるりと見せていただきましたが確かにそのとおりのようです。これまでのどのインドラもこれほどの宮殿は建てたことがありません」

インドラは言いました。
「これまでのインドラ?おまえはいったい何を言っているのだ」
若者は答えました。
「インドラはあなた以外にも居たのです。これまで大勢のインドラが現れては消え現れては消えていきました。いいですかヴィシュヌは宇宙の池で眠りその臍から蓮が生えその蓮の上に創造主ブラフマンが座っている。ブラフマンが目を開けると一つの世界が生まれそれをインドラが治めるがブラフマンが目を閉じるとその世界は消え目を開くと世界が生まれ閉じれば消える。そしてブラフマンの命は43万2千年で終わります。すると蓮も萎み新しい蓮が花を開き新しいブラフマンが生まれます。
天空には無数の銀河が散らばっています。その星のひとつひとつで蓮の上でブラフマンが座り目を開けたり閉じたりするたびにインドラが生まれては消えるのです。
たとえ海にある水滴の数や浜辺の砂粒の数を数えられたとしてもブラフマンの数は数えきれませんしましてやインドラの数など想像もつきません」


若者がそう話しいると宮殿の床を蟻の群が整然と列をなして横切っていきます。それを見て若者は声を立てて笑いました。
インドラが腹を立て「なぜ笑う」とたずねると若者は言いました。
「気分を害されたくなかったら訳は聞かないことです」
インドラはそれでも尋ねました。
「頼むから教えてくれ」
すると若者は言いました。


「あの蟻はこれまでのインドラたちです。彼らは長い時間をかけて魂のいちばん低い状態から最高の所まで上り詰めました。しかし稲妻で怪物を退治して自分はなんて偉大なんだと思ったらまた低いところへ落ちてしまった」
インドラは大変ショックを受けてすっかり幻から覚めました。もう宮殿を造るのは止めることにして棟梁にそう命じました。棟梁は望みどおり仕事から解放されたわけです。

インドラは旅に出て行者になろうと決心しました。ヴィシュヌの蓮の花の下でひたすら瞑想にふけるつもりでした。

ところでインドラにはインドラニという美しい后がいました。インドラニはインドラの決心を聞くと神々の祭司のもとへ行きこう話しました。
「インドラが宮殿を出て行者になると言うのです」
すると祭司は答えました。
「では一緒に宮殿へ行きましょう。私が話してやります」
祭司は宮殿に行きインドラの玉座の前でこう言いました。
「あなたはいま王の座に就いています。神々の王になっています。あなたはブラフマンの神秘をこの世において体現しているのです。これは大変な特権です。その事を感謝して受け入れ名誉に思い自分の本来の姿を忘れずに人生を歩むことです」

その教えにしたがってインドラは行者になるという考えを棄てました。
自分の人生の中でブラフマンという宇宙の最高原理のいわばシンボルとして永遠を体現できることを悟ったのです。


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